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2006年4月 9日 (日)

建築の風景;白金台の砦 後編

20060023日吉坂ももうすぐ上り詰めるあたり、
バスの車窓には、ビルの谷間に、
茶褐色の古びた「砦」の一部が見えています。

あえて、帰路に等々力行きの都バスを選んだのは、それが目的というわけではありませんでしたが、とうの昔に仕舞い込んだ、少年の頃の記憶がフラッシュバックしてきたかのようでした。事後取材も含め、それが今回の、投稿を纏めるきっかけでした。

白金台の近辺は、小学生の時分でも、当時の高輪の住まいから出没する守備範囲としては無理のないところで、多くの記憶がちりばめられているところです。
今回のテーマである「白金台の砦」は、
「旧国立公衆衛生院」の白金庁舎跡であり、敷地の奥には東京大学の「医科学研究所」(以前の伝染病研究所)の施設があります。
坂の上のバス停も、今は南北線の駅名から「白金台駅前」と云うようですが、昔の「伝研前(医科研前)」が、私には馴染みの名称です。

多少、復習しますと、
「旧国立公衆衛生院」は、我が国の公衆衛生の改善向上を期するため、米国ロックフェラ-財団の経済的援助により、公衆衛生技術者の養成及び訓練並びに公衆衛生に関する調査研究機関として昭和13 年3 月29 日公衆衛生院官制が公布され、厚生省所管として設立されました。
現在は、厚生労働省の国立試験研究機関の重点整備・再構築の一環として、国立医療・病院管理研究所及び国立感染症研究所の一部と統合され、国立保健医療科学院として、平成14年4月1日付けで埼玉県和光市に設置されています。
「医科学研究所」は、明治25年に北里柴三郎を初代所長として大日本私立衛生会附属伝染病研究所が設立され、明治32年に内務省所管の国立伝染病研究所となりました。
その後、大正 5 年に東京帝国大学附置伝染病研究所となり、昭和42年に伝染病研究所が医科学研究所に改組され、現在に至っています。(各団体HPを参照)

1974640 この航空写真には、テーマの旧国立公衆衛生院(右下S15)と医科学研究所1号館(左上S12)が見えますが、中央の塔屋の両脇には、大きく翼を広げた翼部が分かります。敷地利用上の制約か、広げた形と閉じた形の対比も興味深いものがあります。

20060031 旧国立公衆衛生院白金庁舎(S15)は、既に立入禁止となっているため、周囲に緑色の仮囲いが巡らされています。現役時に、記録できなかったのは残念であるとともに、もう少し高いビューポイントところから撮影できれば、大変豪壮な建築を表現できたでしょう。(竣工時の写真を掲載されているページもありますので、Googleで検索してみて下さい。ご覧になれば、関心のある方は、何かしらの感慨を持たれると思います。)

いずれも設計は、「内田ゴシック」で有名な、内田祥三氏(工学部教授、後に第14代総長)で、関東大震災(T12)の後、東京帝国大学営繕課長事務取扱として本郷キャンパスの復興にあたっていた、最終の時期と重なります。
昭和12年には廬溝橋事件に端を発する日中戦争が始まり、昭和15年には日独伊三国軍事同盟が締結され、翌年には太平洋戦争が始まる時代背景の中であることを考えれば、その後の歴史の動乱が吹き抜けた(外側だけかもしれませんが)建築物ということですね。

20060035医科学研究所1号館(S12)は、同じく内田祥三氏の手による、旧国立公衆衛生院に遡ること3年前の作品ということですが、なるほど、本郷の建築群とも共通する全体の意匠はよく似ており(壁面のゴシック風の飾尖塔もまったく同じ)、旧国立公衆衛生院白金庁舎はその発展形と捉えるべきなのでしょうか。

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最後に、今、ここに立っている自分とともに、数十年前の私もここにあったことが、何か不思議な気がしてなりません。
少年の頃、正門をくぐり、敷地内を探検したことは間違いありませんが、何処をどう走り回ったかは、もう記憶に定かではありません。
今は人影のない、旧国立公衆衛生院の正面車寄せあたりにも、きっと、少年は出没していたのではないかと思います。当時、高輪や白金の路地裏を走り回った少年の姿のまま。

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