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2006年5月13日 (土)

建築の風景;高輪の息遣い

5月4日に覚林寺(清正公)の大祭がありましたので、これを機会に再訪し、思いつくまま歩き回りました。
白金台の旧朝香宮邸から旧竹田宮邸、旧北白川宮邸に連なる縁と、高輪の歴史の息遣いに3回程度で触れてみたいと思います。旧朝香宮邸はアール・デコの装いを纏った旧皇族の私邸として有名ですので、最後にさらっと触れてみます。

朝の一仕事として訪れた東京都庭園美術館(旧朝香宮邸)を後に、都バス(品93)を利用して、「白金台5丁目」から品川駅に直行することにしました。

2006_05040020640_2 現在の品川駅正面の風景です。JR駅舎と、京浜急行品川駅、京急デパート(今はウイング高輪イースト)のファサードは、以前と何も変わらず、そのスカイラインの上に忽然の高層ビルが屹立する風景は、なんとも不思議な光景です。
エスカレータを上がれば、そこには別の街が躍動していますが、
高輪側から俯瞰で見るかぎり、遙か昔の少年時代と何も変わりがありません。
...と思っていましたが、
駅前の僅かばかりの時代の痕跡を通り越し、新品川プリンスやウイング高輪ウエストへの人の波は途切れることもなく続いています。
そう言えば、水族館まである街になっていたんだっけ...。

2006_050400171640_1 写真右脇は品川プリンスです。
見にくいかもしれませんが(寄りで撮ってこい!)、その正面左脇に、緑色の固まりが分かると思います。その正体は草生した石垣なのですが、その裏側には、戦前の地図にも存在する生活道路らしき階段が続いています。
偶然、地図上で発見し、どうも気に掛かっていましたので、今回、現地調査をしてきました。

2006_05040022640_1 品川プリンス側に渡り、品川プリンス正面左脇の駐車場スロープまでたどり着くと、その脇に、見上げるような石垣があります。建築物らしきものは見あたりませんでしたが、地図どおり裏手に回り、戦前からの階段を見つけて頂上まで登ってみました。階段途中に1ヶ所入口部分があり、頂上部分と階段状に2段に造成されていたようです。その写真です。

2006_05040024640_1 現在は、正面に高層ビル群を望んでいますが、目を落とすと、朽ち果てそうな柵の手摺りが、時の移り変わりを感じさせる一角でした。
戦前からのものと思われますが、
当初は、目前の高層ビルはもとより、
目の前の埋立地も半分ほどだったでしょう。雛壇で眺望を確保した、遠くに海を見渡せる絶好のロケーションだったのではないでしょうか。そこに、どんな生活があったのでしょう。

そんな関心から、すこし来歴を調べてみることにしました。
お隣の品川プリンスの素性を紐解く必要がありますが、詳細は別の機会に譲るとして、とりあえず、西武がここに礎を築く前は、長州毛利家の高輪邸でありました。

明治4年に、神田橋邸(実際は、大手門の前あたり)から転出することを求められ(安政年間の絵図では旧播磨姫路藩邸とあるが、明治4年の絵図で山口毛利とある)、替わりに高輪の敷地が与えられたようです。その敷地は、明治7年には内務省・大蔵省の合同新庁舎敷地となっています。その後、「芝高輪南町27番地」は毛利公爵の私邸になりましたが、戦後、住宅・事務所・書庫を除き処分したとされています。昭和22年に初めて西武が関与して65区画の分譲を行ったことを皮切りに、翌昭和23年には、残余を西武鉄道が買収したとのことです。

今回話題にした、草生した石垣の造成地は、戦前の地図では本邸と同一地番であり、一連の敷地として表示されているものがあります。権利関係までは踏み込んで調査していませんが、街道沿いから山の手の上がる、僅かに屈曲する道路の形状も古くからの地図でも認められ、戦後の分譲の対象となったとしても、毛利家本邸との密接な関係があったことを伺わせるものがあります。
品川駅と東海道線を跨ぐ八ツ山橋の中程で、見晴らしのよい石垣の上の宅地には、いったい、どんな戦後があったのだろう。どんな歴史をたどった一角なのだろうか。
そんな、イメージが頭の隅に居座っています。

余談ですが、
戦後の、西武鉄道による「毛利邸」買収の後、「ホテル毛里」という名前が出現します。これは、まったく想像が及ばないところでしたが、紐解くうちに、他の旧華族邸や旧皇族邸の買収も含め、その手法の一端を垣間見ることになりました。
まだまだ、奥が深いなあ...。

今回、猪瀬直樹さんの「ミカドの肖像」の他、H.FUKさんのHP「西武グループの歴史(個人的趣味です)」を主に参考にさせて戴きましたが、西武グループの歩みを網羅的に整序された、大変な労作です。ありがとうございました。

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