« 路地の風景*そこにあることが大切なこと | トップページ | 路地の風景*アール・ヌーボーな家 »

2006年6月11日 (日)

建築の風景;高輪の息遣い 5

しばらく高輪の「路地の風景」を切り取っていましたが、ここで少し建築に話しを戻して、旧東海道から高輪の丘からへ登る、「桂坂」に纏わる「建築の風景」を捜して見たいと思います。

「子供の頃、この坂を上り下りする度、
両側にそびえる石垣が醸し出す圧倒的な量感に、
何か、別な世界と出入りするような不思議な感覚を覚えた。」

2006_052600351000
2006_052600171000 
桂坂は、明治時代まで、現在のような直線の道ではなく、坂の麓と中腹付近で2カ所のクランクがありました。石垣は、そのクランクに挟まれた中間部分にあります。(明治45年の地図までは確認できる...)
その後、いつ頃現在のような姿に開削されたのか材料がありませんが、開削後も旧道は、枝分かれした道として生きています。
(追補 高輪*高野山と桂坂の姿のこと
2006_05260007800_2この、緑が溢れる塀に沿った道が、
第一京浜から上ってきた旧道のクランクの途中ですが、当時を偲ばせるところが何かしらあります。


2006_05260062800_1もう一つのクランクは、桂坂の
中腹で右手に折れたところ。
高輪台小学校の脇に沿って、
二本榎商店街に至る旧道。



その石垣は、下り坂の左手が山下太郎氏(1889~1967)の旧宅(現、野村證券研修センター)、右手が朝吹常吉氏の旧宅(現、東芝高輪クラブ)です。
2006_05260021900_1
2006_05260032800







坂の途中から見上げると、旧山下邸はほぼフラットな造成、向かいの旧朝吹邸は二段の雛壇造成の様です。そのすぐ下の、現在は蔦の生い茂るS邸も同時期と思われます。石垣の仕様は同一に見えますが、同一時期に造成され、竣工時には、坂の様子が一変したのではないでしょうか。
「建築の風景;高輪の息遣い」で品川プリンスの脇に残る個人宅の雛壇造成地に触れましたが、この大邸宅は、壮大な石垣の上で、
遙か東京湾を望む「眺望」と「広大な敷地」を、同時に手に入れたのでしょう。
2006_052600221000_1
山下太郎氏は、初めてサウジアラビアとの間で石油利権獲得に関する協定(1957)を締結し、アラビア石油株式会社を創設したことで知られた方です。(何か妙ですが、経緯はサウジアラビア大使館のHPに詳しい)
「アラビア太郎」という通り名が有名で、子供の頃、「アラビア太郎のお屋敷なんだって」と、親から伝え聞いたのも思い出です。しかし、子供心には、石油会社の社長さんのイメージがあるわけもなく、アラビアの王子様のイメージが先行していました。

旧宅については、残念ながら材料がありませんが、子供の頃、石垣の上の世界に進入したことがあります。子供に限って言えば、入るなと書いてあれば入りたくなるのは仕方の無いことでしょう。それでもあまりに厳粛な雰囲気に負け、エントランスの坂を登り切ったあたりで引き返して来ましたが、僅かの間、坂の上の世界を見回したことを記憶しています。

2006_05260037800
2006_052600288002006_05260023800
この門灯は
点灯することがあるのだろうか




2006_052600258002006_05260015800敷地内に
テニスコートがあったとの記述があるが、その外柵か、それとも展望施設か


2006_052600241000
旧朝吹常吉邸は(現、東芝高輪クラブ)、1925(T14)年、個人邸や教会建築、学校建築の他、病院、金融機関、ホテル等あらゆる分野で活躍したW.M.ヴォーリズの作品です。(この建築家については詳細に研究され、その多彩な足跡は、具体的に伺い知ることができますが、太平洋戦争開戦時の昭和16年には帰国の道を選ばず、日本国籍の取得までした方だそうです。知りませんでした...。)
朝吹常吉氏は、明治期の三井を支えた朝吹英二氏(四天王と呼ばれたらしい...)の長男で、後に三越、朝日生命の社長を歴任され、1922(T11)年、日本庭球協会の初代会長を務められたことでも有名な方だそうです。
1925(T14)年の常吉氏の新邸建築の前、父、英二氏に関する年譜によれば、「1915(T4)年 高輪に新邸の建築を着手する」とありますので、向かいの旧鈴木邸の成り立ちを含めて、大正初期から、桂坂の開削工事と関連した動きがあったことが伺われます。
しかし、1923(T12)年には関東大震災が襲っている訳ですので、
その辺りの前後関係には関心があるところです。

(追補) 「建築の風景;高輪の息遣い 6」に続く。

*朝吹英二氏の評伝については、「よしやん」さんのHP「中津近代人物情報室」を参照させて戴きました。

|

« 路地の風景*そこにあることが大切なこと | トップページ | 路地の風景*アール・ヌーボーな家 »

コメント

コメントを書く



(ウェブ上には掲載しません)


コメントは記事投稿者が公開するまで表示されません。



トラックバック

この記事のトラックバックURL:
http://app.cocolog-nifty.com/t/trackback/152557/10464834

この記事へのトラックバック一覧です: 建築の風景;高輪の息遣い 5:

« 路地の風景*そこにあることが大切なこと | トップページ | 路地の風景*アール・ヌーボーな家 »